直線的に進まない時間

最終更新: 2020年12月10日

メキシコで仕事をしている多くの日本人はメキシコ人の時間の不正確さを快く思っていないはず。わたしもそうでした。今でも心に余裕がない時はそうです。


しかしこの国でうまくやっていくためには時間は必ずしも直線的には進まないということを理解しなければならいと考えます。


わたしがメキシコに渡る前、メキシコ人の友人が日本はmuy organizado(とても整然としている、統率されている)としきりに言っていたことをよく思い出します。当時は何のことやらピンときませんでした。電車の発着の時間が正確だからか?


その後実際にメキシコで生活し社会と深く関わるようになり、その意味がわかるようになりました。


まず、メキシコでは日常生活が固定化されていないとう現実があります。日々の生活は絶え間ない変化をベースに動いています。


他の途上国に比べれば政治は比較的安定していますが、それでも政権がかわれば、経済、税務、労務政策は大きく変わります。


また交通量の増減が激しく、デモなども頻繁に起こり、移動の時間を読むことは困難です。大雨が触れば洪水状態になる地域も発生し、街の機能はストップし停電も珍しくありません。


すべてが規則正しく間違いなく機能している日本とは前提条件が異なっているのです。


先が見えづらいメキシコの状況を考慮せず、少しでも遅刻してきた社員に問答無用に重い罰を課している会社がありました。デモで道が封鎖されていようが、大雨が降ろうが遅れてきたらその日は仕事をさせず、給料からその分を差し引いていました。


日本であれば電車が遅れたら鉄道会社が遅延証明を発行するなど、遅れの正当な理由は証明できますが、メキシコではもちろんそんな証明はありません。その会社では日本人とメキシコ人の関係は非常にギクシャクしていて離職率は上がっていきました。


一方、別の会社では別のアプローチをしていました。新任研修においてその会社のメキシコ生まれの日系人役員がメキシコにおける心構えを述べていた時のこと。


「メキシコでうまくやっていけるかどうかを見分けるのによいテストがる。バスに乗るために列に並んでいる。自分が乗る番になった。しかし乗ろうとした時運転士は別の者を優先した。こんなことに過度に気をもんでいるようだとこの国ではうまくやっていけない」


理不尽なことを認めよ、というよりはむしろ予想できないことが起こりうるメキシコでは時間は直線的に進まないというメッセージだったのだろうと思います。この会社は非常に成功し、現地メディアに超優良企業として紹介されました。


メキシコでは予測が困難な難題が生じることが多いため、余裕を持っていて咄嗟の時に対処できる人の方が評価されます。あらかじめスケジュールをたてても良いのですが、融通の効かなさは非効率とみなされます。


日系の会社では中長期計画で5年先や10年先を見据えた計画が立てます。そのような時メキシコ人の心の中を覗いてみたらどんなでしょう。


「10年先のことなどわかるはずない。今からそんな先のことを決めるために時間を割くことは非効率だ」


きっとこんなことを思っているでしょう。


メキシコ人に10年先の計画は単なる理想です。そのためと思われますが数値目標を設定させるととんでもなく高かったりします。


もっともメキシコ人は先が読めない状況に慣れ過ぎてしまっていて、やり方によっては対処できる場合でも最初から諦めてしまっていることがあるのも事実です。そんな時Ni modo(しょうがない)と言いますが、日本人はこれを非常に嫌います。


会社を運営していくにあたっては、当然のことながらすべてを許してしまって構わないというわけではなく、時には厳しさも必要でしょう。


日本人の側としてはメキシコの置かれている状況、前提条件を理解して、理解してから理解されるというスタンスが重要になってくると思います。そうすれば日本のやり方に理解を示してメキシコ人も増えてくるでしょう。



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