メキシコでは2010年代に入り、自動車産業を中心とした日本企業の進出はめざましく、メキシコ国内で1200社に迫る勢いです(2018年現在)。進出にあたっては、当法務、財務、販売戦略面などはしっかり検討され対処されている場合が多いようですが、文化面に至っては大抵の場合、後回しとなってしまいがちです。
文化の違いに起因する損失が数値化されていないことが、優先順位を下げ後回しとなっている大きな要因のひとつと思われます。
日系企業が外国企業を買収しても必ずしも成功するわけではないようです。これは経営モデルの違いとともに、相手の文化の理解が十分にできていないまま、それまでのやり方を押し通そうとする、あるいはそのやり方しかわからないことによるものと思われます。
メキシコにおいては会社によって、おかれている状況は必ずしも一様ではありませんが、文化の違いに起因する問題点には多く共通点があります。
日本人の側からよく聞かれる声としては
メキシコ人に指示しても、指示が長続きしない。問題の本質を理解していないので、ほとぼりが冷めると忘れてしまう。
指示待ちが多く、自分で判断しようとしない。
全体感がわかってない。
信じられないような言い訳をする。
できないことをできないと言えない。
わかっていないのにわかったふりをする。
他方、メキシコ人の側から聞かれる声にも共通したものが多くあります。
日本人はメキシコ人のアイディアに耳を傾けない。
日本ではこうしているからということで通されてしまうが、必ずしもメキシコのやり方になじまない。
日本人は日本人のみで情報を持ち、メキシコ人と共有したがらない。
フィードバックがない。
フィードバックがないといってもミスした時にはすぐに指摘される。一方、良い仕事をした時にねぎらいの言葉がない。
日本人は決定に時間がかかる。
それぞれの立場に立てば尤もな言い分と言えます。
文化の違いに起因するコミュニケーションの不足や、軋轢によって引き起こされる経済的損失の大きさが把握できていれば、そのような状況は放置できないはずです。異文化理解、コミュニケーションの問題は単に国際社会でのマナー、職場の雰囲気の問題ではなく、できれば理想的というレベルのものではありません。
日系企業が大挙して押し寄せてきているメキシコ中央高原地区では誤解、意思疎通の不足による離職率は高くなっています。また日系企業に悪い印象をもって辞めていったメキシコ人が、会社の悪口を外で言い触らし、会社の採用活動にも影響しているというケースもあります。
また工場現場での日本人とメキシコ人従業員のトラブルが地元の新聞に取り上げられるようになりましたが、日本人側に問題があるように書かれている場合が多くあります。頻繁に発生すれば企業内の問題にとどまらず社会問題に発展する可能性もあります。
次号に続く(メキシコ人のライフワークバランス)
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